アンダーサイカ


「冷めてしまいましたね。
煎れ直しましょうか。」


そう言い、テーブルの向こう側でカチッと何かスイッチのようなものを押したヨシヤ。
「何したの?」と訊ねれば、


「電気ケトルのスイッチを入れたんですよ。」


「…今風の家電だね。」


お店の外観は古めかしいのに。

すき焼きの時の卓上コンロと言い、実はどこのお店も中は生活感に溢れてるのかもしれない。


お湯が沸くまでの数分にまた何か、学校のことでも話そうか。
そう思って口を開きかけたけど、


「豊花ちゃんの、ご家族の話が聞きたいです。」


「…………………。」


ヨシヤの質問で、完全に出る幕を失ってしまった。



「…家族……えっと…、
お父さんとお母さん……、」


ここで一瞬、稔兄ちゃんのことを言うべきか迷った。
もう10年も昔に亡くなったのに。

……いや、でも……、


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