アンダーサイカ



―――稔、兄ちゃん…?



『10年前にミノルくんは自殺し、アンダーサイカに“商売人”として幽閉されました。』



ヨシヤの言葉が反芻する。

じゃあこの男の子は…、まさか本当の、本当に…?



「稔、兄ちゃん…?本当の…、本物の稔兄ちゃん…!?」


「ああ、そうだよ。」


「本当に…!?
稔兄ちゃんなんだね…!?」


私は何度も確認した。
何度も名前を呼んで、彼が…稔兄ちゃんだという証明が欲しかった。



「ふふ…。だから、何度も言ってるじゃん。

ボクは稔だよ。
…久しぶりだね、豊花。」



「………っ!!」


胸がギュッと締め付けられる。

私はひどく感動していたんだ。
だってこの人は…稔兄ちゃんは、私の思い描いていた優しいお兄ちゃんそのもので…。



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