アンダーサイカ


堪えきれなかった。

私は二人を隔てていたテーブルを乗り越えて、稔兄ちゃんのすぐ傍まで寄った。


「稔兄ちゃん…!」


近づくとよく分かる。

稔兄ちゃんの顔立ちはどこか私と似通ってた。
背丈も体つきも、亡くなった12歳の時のまま変わらなくて。


その同じ体を、私はギュッと抱きしめた。



「…稔兄ちゃん!
良かった…やっぱり稔兄ちゃんは、ちゃんといたんだ…!

作り話なんかじゃなくてっ、ちゃんとここに…!!」


「豊花…。ずっとボクのこと、信じてたの?10年も?」


稔兄ちゃんの泣きそうな声。
でもそれに対しては、私は罪悪感を覚える。


「…本当はちょっとだけ、お母さんの嘘なんじゃないかって疑ったの…。
写真も見せてもらえなかったから…。ごめんね…。

…でも、稔兄ちゃんはちゃんといた!それが嬉しいの…!!」


< 345 / 506 >

この作品をシェア

pagetop