アンダーサイカ
堪えきれなかった。
私は二人を隔てていたテーブルを乗り越えて、稔兄ちゃんのすぐ傍まで寄った。
「稔兄ちゃん…!」
近づくとよく分かる。
稔兄ちゃんの顔立ちはどこか私と似通ってた。
背丈も体つきも、亡くなった12歳の時のまま変わらなくて。
その同じ体を、私はギュッと抱きしめた。
「…稔兄ちゃん!
良かった…やっぱり稔兄ちゃんは、ちゃんといたんだ…!
作り話なんかじゃなくてっ、ちゃんとここに…!!」
「豊花…。ずっとボクのこと、信じてたの?10年も?」
稔兄ちゃんの泣きそうな声。
でもそれに対しては、私は罪悪感を覚える。
「…本当はちょっとだけ、お母さんの嘘なんじゃないかって疑ったの…。
写真も見せてもらえなかったから…。ごめんね…。
…でも、稔兄ちゃんはちゃんといた!それが嬉しいの…!!」