アンダーサイカ
しかし、どうしたことでしょう。
「え…………?」
居間はもぬけの殻でした。
飲みかけの湯呑みがふたつ置いてあるだけで、そこに豊花ちゃんの姿は無かったのです。
「……薬屋…、ユタカは…っ、ユタカはどうした!!…ここにいたんじゃないのかッ!?」
「…………。」
そんな。有り得ません。
―――目を離したのはほんの2分ほどですよ…?
警備員さんは物凄い剣幕で僕を怒鳴りつけますが、当然のごとく僕には、それを聴き入れる余裕なんてありませんでした。
豊花ちゃんの座っていた座布団を見下ろします。
「襲われた形跡は無い…。では豊花ちゃんは連れ去られたわけではなく、自分から…?」
冷静な分析をした次の瞬間には、
「…豊花ちゃん……ははっ…、どうして、こうなるんですか…?あはっ、ハハ……。」
僕は狂ったように、か細い笑い声をもらし始めました。