アンダーサイカ


つまり私たちは、生前罪を犯した商売人の溜まり場へ向かっているということ。

それを嬉しそうに語る稔兄ちゃん…。


―――矛盾してない……?


稔兄ちゃんは、自分のお店がもっと先にあると言った。
自分を“罪深い奴”と言ってることになる。

でもそれならなおさら、稔兄ちゃんがこうしてアンダーサイカ中を歩き回れるなんて変じゃない?



「豊花、止まって。」



突然稔兄ちゃんの号令がかかって、私はその場でピタリと立ち止まった。

目の前にあるのは、


「…エレベーターだ…。」


錆び、ひしゃげた、こぢんまりとしたエレベーターのドア。


ドアの上に書かれている消えかけの数字のおかげで、かろうじてエレベーターと名乗れるほどの荒廃っぷりだ。


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