アンダーサイカ
稔兄ちゃんが下向きのボタンを押す。
すると、5秒もしないうちに到着を知らせる「チンッ」というベルの音。
ひとりでに開いたエレベーターの中身も、外観と同じくらい荒れていた。
「目的地が遠すぎるんだ。
ここからエレベーターで楽に行こう。」
「……え…?」
稔兄ちゃんがエレベーターに乗り込む。
手を引かれるままの私はそれに続くしかないんだけど、この時ばかりは、私は言い表すことのできない不安を抱えていた。
…それでも稔兄ちゃんを信じていたくて。
「うん…。」
ドアはギギギ…と不気味な音を響かせて、閉まった。