アンダーサイカ
「…“ミノル”…?
今回の人鬼の名か…?」
大層驚いた顔を見せる警備員さん。
当然のこと。この世界で商売人が互いの名を知る機会なんて滅多に無いのですから。
ただ僕は警備員さんの名が「キョウ」だということを知っていて、警備員さんは僕が「ヨシヤ」だということを知っています。だからといって互いに呼び合う気はありませんが。
特別な機会…。
豊花ちゃんを介して少しずつ、この世界に変化が起こっている…。
「………ええ。こう言えば警備員さんにも分かるでしょう。」
―――だからこそ…。
「“見世物屋”のミノルくん。
80番街の最深部に店を構えていた幼い商売人ですよ。」
「………っ!!!」
警備員さんもこれで、嫌でも気づいたことでしょう。
僕は口にしたくない事実を、淡々と述べます。
「…殺されるより、もっと酷いことになるかもしれません。」