アンダーサイカ
長い長い時間、エレベーターに乗っていた気がする。
点滅を繰り返す薄暗い電球を見つめていると、稔兄ちゃんが強く手を握ってきた。
「? どうかした?」
「ううん。何となく。
…ねえ、豊花。」
「ん?」
不十分な照明のせいで稔兄ちゃんの表情が分からない。
笑ってるのかも分からない。
「…何があってもさ、豊花はボクを見捨てたりしないよね?」
「?」
その口調はさっきとあんまり変わらなかった。
どんな意図で訊ねたのか。それを判断することができなかった。
でも、そんなことしなくたって、
「うん、しないよ。」
私が稔兄ちゃんを見捨てる理由なんて無いから。
「そう。良かった。」
“チンッ”
エレベーターはドア上部の数字をオレンジ色に光らせて、
地下80階に到着した。