アンダーサイカ
私は完全に言葉を失う。
稔兄ちゃんが、ホルマリンの中に手を突っ込んで、ヒヨコオバケを一匹手に取る…。
緑色の臭い液体をぼたぼた滴らせながら、そのオバケを、
…“食べた”。
「………っ!!!」
果物か何かみたいに。
稔兄ちゃんは白い歯でオバケの体を半分も噛みちぎり、ぐちゃぐちゃと躊躇なく咀嚼(そしゃく)し始めた。
オバケの傷口からはホルマリンとは違う黒い液体が流れ出ていて、
「……あっ…!!!」
半分になってしまった体に残る口が、微かに動いたのが見えた。
声が出てない。でもそのヒヨコオバケは確かに、
【………ユ タ カ……。】
私が紙で名前を教えた、あのお客様で…―――。