アンダーサイカ
「…やめて、やめてッ!!
稔兄ちゃんひどいよ…!!
お願いだからもうやめて!!」
弾かれたように私はステージに上がった。
またお客様を口に運ぼうとするのをなんとか止めたくて、思いっきり手を伸ばす。
その手首を、
「…あっ!」
稔兄ちゃんの空いてるほうの手で難無く掴まれた。
半分になったお客様を床に落とし、ホルマリンと黒い血でベタベタになった手で、私の頬に触れる。
「ひっ…!!」
冷たくてぬるぬるしてる。
すごく気持ち悪かった。
「………豊花、ひどいのはお前だろ?
ボクはずっと“お前の傍にいた”のにちっとも気づかないで。」
「…え………。
傍に、いた…って…?」
―――そんなわけ…。だって私、さっき初めて稔兄ちゃんを見たのに…。