アンダーサイカ


ヨシヤの腕の中で、私は首を後ろに向けた。

「…っ!」


塩をかぶった稔兄ちゃんの体は、ひどく焼け爛れていた。
人鬼と化した黒い部分だけじゃない。血色の悪い人の肌の部分も、真っ赤にめくれ上がってる。

その痛々しい姿を見て、私はやっと事態を飲み込む。


稔兄ちゃんに殺されそうになったところを、間一髪、ヨシヤに救われたのだと。



「…く、薬屋…!薬屋アァァ…!!

豊花を渡せよ…!!
ソレはボクのモノだッ!!」



稔兄ちゃんの憎しみこもった真っ赤な目が、私たちを睨む。


私が怯えビクッと体を強張らせたのを、抱きしめたままのヨシヤは素早く察知した。

「大丈夫です」の意味を込め私の体を包む彼。
そして真剣な眼差しを稔兄ちゃんに向けると、



「…嫌です。
豊花ちゃんは渡しません。

例えそれが、ミノルくんのお願いでも。」




初めて、笑顔を消した。




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