アンダーサイカ
僕が薬屋として発現したのはその直後。
地下街が無かった当時は、駅周辺に屋台や掘っ建て小屋がいくつも立ち並び、各々商売をしていました。
…僕もまた、誰に教えられたわけでもなくこの世界のルールを把握し、ただ薬屋として淡々と“お客様”の相手をする。
自分は死んだのだ。
死後の世界で、際限なく働かなくてはならないのだ。
自分と黒い化け物以外、誰の顔も見られない世界で。
…たった一人だけの世界で…。
「………いやだ…。
いやだっ…!」
僕の心の誓いが“罪を犯さないこと”から、
“地上人(ひと)を殺してでもこの賽の河原から逃げ出したい”という欲求に変わったのは自然なことでした。
賽の河原から逃げ、お客様方のあの電車に乗れば、新たな現世に生まれ変われる。
新たな世界で、僕は人を愛したい。愛されたい。
輪廻を信じ、僕は50年間ずっと、ずっと……―――。