アンダーサイカ



けれどもヨシヤの言葉は、稔兄ちゃんの感情を強く強く刺激した。



「ふざけるな…っ、今更…、今更お前まで…!!

お前まで、ボクを独りにするのかよッ!!!」



突然、稔兄ちゃんが両手を大きく広げた。


それに呼応するように、背後の壁に整列していた包丁すべてが宙に浮き、稔兄ちゃんの傍らに控える。

切っ先を、私とヨシヤに向けて。


「…ひっ…!」

思わず声を上げた私を、


「…っ!」


ヨシヤはとっさに強く抱きしめ、庇おうとした。



その直後だ。

包丁が、敵を見つけた蜂の群れみたいに、私たち目掛けて飛び掛かってくる。



無数の風切り音が、獣の唸り声のよう。



「…稔兄ちゃん…っ!!!」



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