アンダーサイカ


「すごい……!」


…でも、

包丁に向かって銃を撃ったとすると、



「ッ、稔兄ちゃん……!!」



その中央にいた稔兄ちゃんが無事で済むはずがない。


硝煙の中に佇む、稔兄ちゃんの影に声をかける。

影は、ゆらりとよろめいた。


「…っ!!
稔兄ちゃん…っ、稔兄ちゃん返事して…!」


「…豊花ちゃん、まだ危険です…!」


身を乗り出したところを、ヨシヤが強く押さえ付けた。



…私の頭の中では恐怖と、不安が混乱し合っている。

稔兄ちゃんがまた攻撃してくるのではという恐怖が強いのに、
それ以上に、稔兄ちゃんが死んでしまったらどうしよう…とも思ってるんだ。



どうしようもないのに。
稔兄ちゃんが無事生きていたって、私にはその後の彼を救うことなんてできないのに、

無責任にも私は“生きててほしい”と願ってる…。



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