アンダーサイカ


オバケの狙いは稔兄ちゃんただ一人だった。


剥き出した牙の隙間から涎が溢れ、ぼたぼたと床に落ちて水溜まりをつくる。

それでも稔兄ちゃんはオバケの目玉から視線を逸らさなかった。
逆なんだ。逸らすことが許されないみたいに、食い入るように見つめている。



「…なぜっ……、なぜ、いけない…!?

ボクはただ、自由になりたかっただけだ…!

人鬼になって、お前たちのような自由の身になって…っ、この糞みたいな牢獄から出たいだけだったんだッ!!」



【言イオルワ、何モ理解セヌ餓鬼ガ…。
貴様ハ他ノ商売人達ト同等ノ、…アルイハ、ソレ以上ノ罪ヲ犯シタ。

ココハ罪ヲ償ウ場所。救イヲ求メル事ハ、筋違イダ。】



稔兄ちゃんの犯した罪…。
それはまず、両親よりも先に死んだこと。そして生前、友達を自殺に追い込んだこと…。

どちらも…永久幽閉に値する許しがたい重罪なんだろう。この世界のルールでは…。


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