アンダーサイカ
「え………っ?」
―――地、獄……?
その単語を聞いた時、そこにいる誰もが顔を青くした。
地獄の入り口であるアンダーサイカでの苦行を強いられてきた彼らには、地獄の苦しみがどれほど苦しいものなのか……どれより酷いものなのかが想像できてしまうんだ。
恐怖を拭い去るように叫んだのは稔兄ちゃんだった。
「…ふざ、けるな…っ!ボクは…ボクは行かないッ!!
お前たちの巣窟になんて…ッ、お前たちの言いなりになってたまるかよ!!!」
ボッと爆発音がして、稔兄ちゃんの黒い腕が丸太のように一瞬で肥大した。
五本の爪は包丁よりも鋭利に研ぎ澄まされ、格段に筋力を増した腕を使って、稔兄ちゃんはオバケに襲いかかる。
【……―――。】
オバケが稔兄ちゃんのほうを振り返る。
肉塊の武器を振りかぶった稔兄ちゃんの姿。
……でも、オバケに焦りの色は無かった。
【…餓鬼ガ。】
稔兄ちゃんが腕を振り下ろすより速く正確に、オバケは体から生えた針の一本を伸ばし、
「…ガぁッ…!!」
稔兄ちゃんのお腹を貫いた。