アンダーサイカ
槐は右手をこっちへ伸ばした。
彼との間には5メートル近く距離がある。あったはずだ。
なのに、ひとつ瞬きをすると、
「!!」
いつの間にか彼は、私のすぐ目の前に立っていた。
何をされるんだろう。
不安が胸を過ぎって、思わず身を引こうとしたけど、
伸ばした右手が素早く私の左手を握った。
…ただし、とても優しい手つきで。
「…利口な君なら理解していると思う。
等価交換とは、どちらも同じだけの代価を支払った上で成り立つ。
…だが、今の君の状態では、残念ながら釣り合っていない。」
「………っ。
…わ、私一人の命で二人も助けてほしいなんて、ずるいって分かってるけど…!」
足りないぶんを…「体の一部をもぎ取る」なんて言わないだろうか。
握られた左手にじんわりと汗が滲んだ。