アンダーサイカ
「………いいや、逆だよ。」
目を疑った。
槐は私の左手を優しく持ち上げ、その手の甲に、
噛み付いた。
「…………イッ…、」
でも針でちょっと刺されたような軽い痛み。
唇が離れると、傷口からはごく僅かな出血があった。
意味が分からず槐を見上げる。
「…逆だ。西城 豊花。
だって、君は“生きている”。
尊い生者とでは、死者の魂をいくら積もうと天秤は釣り合わないのだ。
……だから、」
槐が自分の左手の甲を噛む。
私の時とは違い、結構な量の血が出た。
…でも“赤”じゃない。
“紫色”だ。
それはまるで、今まで私がヨシヤに飲まされていたあの紫色の薬のようで。