アンダーサイカ
槐が私の左手を取る。
小さな赤い血の一滴に唇を寄せて、
そのまま、口づけた。
親愛の相手にするように。
「ありがとう、豊花…。
君のおかげで、この世界は生まれ変われる……―――。」
お礼を言われるなんて、変なの。
だってお願いを叶えてもらうのはこっちなのに。
「…ううん。ありがとう、お願いを聞いてくれて…。」
―――さようなら、お父さん、お母さん…。
―――さようなら、潤ちゃん、拓くん…。
もう二度と会えないかもしれない。手紙も電話も、届かないかもしれない…。
―――でもね、姿が見えなくても、声が聞こえなくてもね、人はヒーローになれるの。
稔兄ちゃんが教えてくれたこと…。