アンダーサイカ
こう考えてるのは私だけかもしれないけど、小学生っていうのはとことん負けず嫌いで、仲良くもない相手に謝るのが大っ嫌いだ。
だからこの得体の知れない男に謝った時、私はひどく悔しい気分になった。
その時は。
でも、急にヨシヤの空気が変わったのを敏感に感じ取って、
私はビクッと肩を強張らせた。
ヨシヤは笑顔だ。
でも、鋭い視線は私を射抜かんばかりに研ぎ澄まされていて、
彼の、ゆっくりと開く口を目で追えば、
「今更、逃げられるわけがないでしょう。」
冷たい口調で、そう言われた。
背筋がぞくりとする。
アンダーサイカに最初に入った時と同じくらい、言いようのない恐怖感が蘇ってくる。
私は悟った。
ヨシヤは冗談なんか言ってない。本気だ。
―――本気で…私を逃がさないつもりなんだ。