アンダーサイカ
気圧(けお)されて黙り込んだ私に対して、ヨシヤは続ける。
「本当にお子様だ。まだ、これがどういう状況か分かっていないんですね。
いいですか。
なぜ僕達が異形の者を相手に商いをしていると思います?
それは彼らに“支配”されているからですよ。
それほどこのアンダーサイカにおける“お客様”という存在は絶対的なのです。
…そのお客様に気に入られたきみはまさに異例。
地上人でありながら、こうもやすやすと地下の世界にやって来れるなんて、とても稀なんです。」
言いながら、ヨシヤが一歩一歩近づいてくる。
それから逃げるために、一歩一歩下がる私。
でもここは店の中だ。四歩程度下がったところで、レジのカウンターに背中がぶつかってしまった。
「っ!」
逃げようとしたけど、すかさずヨシヤが両手を私の体のすぐ横に突いて、更にぴったりと密着してきた。
罠にかかり、檻に閉じ込められたタヌキの気分だ。