アンダーサイカ


じいっと下から見つめてやる。

ヨシヤは笑顔を引き攣らせていた。目が、私を憎々しく見下ろす。



「…ずっと思っていましたけど、きみは小賢しい子ですね。

ですが分かりました。いいでしょう。
きみを帰す代わりに、明日から僕に協力していただきます。

誓いの証としてこれを。」


「…?」


ヨシヤは白衣のポケットに手を入れ、紫色に光るものを取り出した。

つられて、そっちに目を向ける。


正体は、紫色の液体が入った、小さな小さな小瓶。
さっきのオバケに売ったうがい薬の瓶よりずっと小さな物。


「この薬を一滴舐めれば地上へ帰れます。

その代わり、僕と交わした約束は守っていただきますよ。
例えきみに何があっても。どんな事情があろうとも。」



私の目先に突き出された、不気味な紫色の薬。

これで家に帰れる。それは嬉しいのに、

胸に漠然とした不安があるのも確かで。


< 62 / 506 >

この作品をシェア

pagetop