アンダーサイカ
「豊花、ご飯もうすぐできるから、今のうちに着替えてきなさい。」
「っ!」
キッチンからお母さんの声。
その声で、呆然としていた私の意識が戻ってきた。
そうだ。確かめに行かなきゃ。
あれが夢じゃないこと。私が見たものを。
受話器を元に戻し、私は自分の部屋に駆け込む。
適当な服に着替え、次に向かうは洗面所。
顔を洗い、歯を磨き、寝癖のついた長い髪を適度に直した。
普通ならその後はリビングに向かう。
でも今回は逆。
私は手ぶらで玄関のほうへ走った。
「あら?出掛けるの?」
顔を覗かせたお母さんのほうを振り返ることなく、私は夏の朝の中に飛び出して行った。