アンダーサイカ
ぴたっ、と、
ふたつのものが止んだ。
一つは、さっきまであんなに吹き荒れていた風。
気持ち悪い生暖かさはもう無く、本来のちょっと涼しい過ごしやすい気温に戻ってる。
「……なんで私、今………?」
私の思考が一時停止した。
…なんで今、私、
ヨシヤに助けを求めた?
「待ってましたよ。
よく来てくれましたね。」
「!?」
ふいに、すぐ近くから聞き覚えのある声がした。
敬語といい、馴れ馴れしい「ちゃん」付けといい、私の中で知る人物といえば一人だけ。
「……よ、ヨシヤ……?」
いつの間にか、そこは地上じゃなかった。
狭い通路の両側に不気味な店構えがずらりと並び、私の目の前には“薬屋”とだけ書かれた古風で現代風な薬局。
そしてその入り口に立ち、腰を屈めた私を楽しそうに見下ろす人。
いつの間にか、私は戻って来ていた。
「お帰りなさい、豊花ちゃん。」
アンダーサイカに。