アンダーサイカ
「呼んだ?」
確かに名前を呼んでた。
でもそれだけで…?
余計訝しむ私に、ヨシヤが手を伸ばしてきた。
「っ!!」
ビクッと肩を震わせる。
何をする気かと警戒すると、
ヨシヤは指先で、私の唇をなぞり始めた。
「僕に教えてくれたでしょう、きみの“名前”を。
この世界…アンダーサイカには、僕達商売人に有利な特権がいくつか存在します。
その内のひとつが、“相手の名前を支配する”こと。」
「し、支配って………。」
おかしな話だ。
ヨシヤは自分で、あのオバケたちに支配されてると言ったのに、…そのヨシヤもまた誰かを支配できるだなんて。
「相手の口から名前を名乗らせることで、その相手を好きな時に召喚することができます。
古来の人間は、他人にそうやすやすと名前を明かさなかったんですよ。それほど名前とは特別なものなんです。」