ヤンデレパーティー
ケースⅥ 十束
(一)
「朱耶(あけや)お嬢様は、一歩も外に出てはいけません」
天涯付き、クイーンサイズのベッドで上体だけを起こした朱耶に語るのは彼女の付添人だった。
ダークスーツで、すらっとした体格が更に引き締まり、一見すればお嬢様のボディーガードにも思えるが、細身なために戦うとは皆無な執事にも見える。
実を言えば、この付添人に決まった役職はない。強いて言えば、『お嬢様の何でも屋』とも言うべきか。
護衛し、世話をし、果ては家庭教師にもなる何でも屋。お嬢様を一番に考える付添人なわけだが。
「お嬢様の体はか弱くあらせられる。そんなお嬢様が外に――他人が吐いた二酸化炭素のたまり場を歩くなどと……くっ、考えただけでも鳥肌が。
その二酸化炭素はきっとお嬢様の体内入るなり、わきわきと内からお嬢様を蝕んでいく。いいですか、おやじやチンピラ、肥満な奴から不衛生な輩、いやいや、もう他人が吐いた空気を吸うだなんて、取り込むだなんて、気持ち悪いことでしかない……!」