ヤンデレパーティー
ケースⅢ 冬月
(一)
13の夏、水分を根こそぎ奪う日照りの時。
夏に行くとしたら大概が海であり、もしくは冷房がきいた部屋に籠るであろう。
間違っても好き好んでうだるような熱さの中、山登りなどしない。
故に、冬月(ふゆつき)が兄の秋月(あきつき)とこうして山登りをしているのは訳あってのことだった。
存分に光合成をする新緑だらけの道筋は舗装もされていない獣道。葉や枝で何度か体を引っかいてしまうほど、まるでこの山自体が人間を拒絶しているように思えた。
先導は秋月。
腰に携えた童子切安綱(どうじきりやすつな)の柄に手を置きながら、身軽な体でひょいひょい登っていく。