ヤンデレパーティー


前を歩く兄の背を見ていれば、ぴたりと止まる。


身構えた体勢が頑強な岩に見えた。押したところでその型が崩れないと知る。


「冬月、用心するんどす」


「分かった」


兄に言われて、冬月は退治用の札を取り出した。刀を持たない――まだ与えられない半人前が持つような弱い力しか発揮しない札だ。


今回、この山に来たのは妖怪退治のため。


冬月は秋月のサポートとして同行したわけだが、実を言えば、単に兄と一緒にいたいからついてきただけ。


腕前がない自身がサポートなんて役に立てるわけもなく、そこは妖怪退治の教えを兄から実戦で教えてもらうためとそれらしい言い訳もつけていたのだった。


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