ブスになりたい女 〜高飛車美少女 VS 秀才クール男子〜

　廊下に飛び出した私は、かなり遠くではあるけど、女子トイレに入って行くちいちゃんの姿を捕らえた。しっかりと視力2.0、いや最近は勉強なんか始めたから1.5ぐらいに落ちたかな、の目で。


　女子トイレまで走って行ったけど、そこにちいちゃんの姿はなかった。たぶん使用中の個室の中にいるのだろう。外から声を掛けようかとも思ったけど、それもどうかと思い、廊下に出て彼女が出て来るのを待つ事にした。


　廊下の壁を背にして立っていると、間もなくして中から女子生徒が出て来た。ちいちゃんだろうと思って声を掛けようとしたら、恵美だった。


　恵美とは、彼女が和也にバケツの水をぶっかけられた例の一件以来、一度も言葉を交わしていない。


　ハッとした顔で私を見る恵美。一瞬、何かを言いたそうに見えたけど、すぐに視線を外して行ってしまった。


　私も、恵美に声を掛けようかと思ったのだけど、何を言えばいいのかわからなかった。


　今度カラオケに行く事があったら、恵美を誘ってみようかな、と私は思った。恵美は、歌がとても上手な子だから。