ブスになりたい女 〜高飛車美少女 VS 秀才クール男子〜
 学校に向かって歩いていたら、名前は知らないけどいつも愛想のいいおばさんが、犬を連れて向かいから歩いて来た。


 私はいつものように「おはようございます」と言ってペコッとお辞儀をしたのだけど、そのおばさんは返事をくれなかった。いつもは「おはよう」と返してくれながら、優しそうに微笑むのに。

 そして、“今日は寒いわね?”とか“暑いわね?”とか、時には“今朝は一段と可愛らしいこと”なんて言葉のひとつふたつ掛けてくれるおばさんだけど、今朝は無言で通り過ぎてしまった。しかもすれ違う瞬間、嫌なものでも見るような顔で私を見て。


 ああ、そうか。私だって気付かなかったんだ。だとしても、挨拶ぐらい返してくれてもいいよね?


 あんなババア、もう二度と挨拶なんかしてやらないんだから!


 ムシャクシャしながら15分ほど歩き、学校の門をくぐった。
 眼鏡のせいで視界が狭く、前だけ見て歩いたせいかもしれないけど、いつもの通学と何となく雰囲気が違う気がした。何がどう違うのかはわからないけど……


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