あの頃、テレフォンボックスで
「大好きな人がいたんだけど、
あー、本当に大好きだったのかな?
今となったらわからないわ。

初めて付き合った人だったから。
男の人が苦手で面白くもない私の傍に
いつもいてくれた人。


でも、厳しい親の目や
今までの自分を変えるのがこわくて
結局、
うまくいかなかったの。


高3の頃の話よ。
遅い初恋よね?


つきあって半年以上たつのに
ただ、会って話すばっかりで。


私の家、門限8時だったんだけど、
ある日、もう少し一緒にいたいって
言われたの。


それで、こんなふうに
道の片隅にあるような
誰もいない電話ボックスから
家に電話をかけて・・・・


友達の家で班ごとの発表の
準備をしなくちゃならないから、
少しだけ遅れる、
って言ったのよね。


親に嘘つくのって、
本当にイヤな感じだった。


ゆううつな気分で電話を切って、
振り返ったらそこに森川くんがいて。


電話ボックスのドアを足で押さえて
突然、私を抱きしめて
キスしようとしたの。


もうびっくりして
なにがなんだかわからなくて
森川くんのこと

突き飛ばして
走って帰ったの。



笑うでしょ?高3にもなって。



その頃から・・・・
なんだか二人が
ダメになる方へ向かっていったんだと思う。」





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