あの頃、テレフォンボックスで
船が港に着いてから
その子は念のために検査をするとかで
救急車で運ばれて行ったけど、
たいしたことはなさそうだった。
子どもの両親は
涙を流してうちの母親に頭下げてた。
母親は『大丈夫です、発見が早くて本当によかった』
と、嘘のない目で
そう言ってた。
帰りの車の中でも
俺はひとことも口をきけずに
ただショックで、
いつまでも小さく震えてた。
子どもが落ちたこともショックだったけど、
一歩も動けずにいる俺の横で
即座に行動したおやじのこと。
医者という職業の母親のこと。
おやじはあのとき、『本当か?』
とかなんとか、そんな言葉をはさむ間もなく、
すぐに、子どもが落ちたと知らせに走ってた。
俺のことばを信じて。
今から思えばあのとき、
今まで自分が
何に対して背中を向けてきたのか、
わからなくなったんだと思う。
その日から
俺は、
ちゃんと学校へ行くようになった。
それから
そのとき付き合ってた女にも
『悪いけど、もう付き合えない』
って言った。」
その子は念のために検査をするとかで
救急車で運ばれて行ったけど、
たいしたことはなさそうだった。
子どもの両親は
涙を流してうちの母親に頭下げてた。
母親は『大丈夫です、発見が早くて本当によかった』
と、嘘のない目で
そう言ってた。
帰りの車の中でも
俺はひとことも口をきけずに
ただショックで、
いつまでも小さく震えてた。
子どもが落ちたこともショックだったけど、
一歩も動けずにいる俺の横で
即座に行動したおやじのこと。
医者という職業の母親のこと。
おやじはあのとき、『本当か?』
とかなんとか、そんな言葉をはさむ間もなく、
すぐに、子どもが落ちたと知らせに走ってた。
俺のことばを信じて。
今から思えばあのとき、
今まで自分が
何に対して背中を向けてきたのか、
わからなくなったんだと思う。
その日から
俺は、
ちゃんと学校へ行くようになった。
それから
そのとき付き合ってた女にも
『悪いけど、もう付き合えない』
って言った。」