あの頃、テレフォンボックスで
ケイタの淹れてくれたコーヒーを飲みながら
リビングのソファに座って
借りてきたDVDを二人で観ていた。


私は上の空でテレビの画面を
ただ眺めていた。


ここでこうして
ケイタと二人でいること。


自分でもそのことに驚き、
呆れ、
それでも・・・・
幸せに打ちひしがれていた。



私の心がケイタで埋められていくように
ケイタの中にもまた、
私の影がいつも張り付いて離れない。



私たちはすこしずつ
共有するものを増やしている。
そのことがこの上なく
嬉しい。



ケイタもまた
DVDなど観ている風ではなくて
やがて、

私の肩に手をまわして
優しくくちびるを近づける。


冬の午後。
暖かい部屋、
コーヒーの香り。


強くて熱いケイタの体。



私は軽いめまいを覚えて
力なくケイタの腕の中に
身を預ける。


ケイタの手が私の体を撫でる。


・・・・・ダメだよ、ケイタ。



でも
もう止められない。


こんなに近くにいるのに。

もっとあなたを近くに感じたい。









< 150 / 201 >

この作品をシェア

pagetop