あの頃、テレフォンボックスで
「すみません。
あつかましくお宅までお邪魔してしまって。

未来の・・・うちの子のことで
ちょっと須藤くんに相談したかったもので。


須藤くん、どうもありがとう。
じゃ、おばさん帰るわね。
失礼します。」


逃げるように部屋を出て行く私。


急いで靴を履き、玄関を出た私のあとを
ケイタが追いかけてくる。


「ねぇ、ちょっと。」



・・・・・・・ごめんなさい・・・・



小さく呟いて、
私はエレベーターに駆け込んだ。



馬鹿だ。
私は馬鹿だ。



一体なにをしようとしていたのかしら。

あのまま
お兄さんが帰ってこなければ。



ハンドルを握る手が
まだ震えている。


家まで、どうやって帰ったのか
覚えていない。






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