あの頃、テレフォンボックスで
海が見えるはずの駅で電車を降りたけど

海はどこにも見えない。


「あれ?おかしいなぁ・・・
間違えたのかな?」

「いいわ、
歩きましょう。」


建物が少なくなる方向へ

二人で歩き始める。




爽やかな陽気と
開放的な気分。


やがて
かすかに香る

潮の香り・・・・・


「やっぱり、海だ!」



私の手を引いて

ソウタくんが走り始める。



・・・・・待って・・・・・




誰も知ってる人などいないと
思うその場所で

手をつないで
海に向かってゆく

わたしたち。



汗ばんだ制服から
たちのぼる
ソウタくんの匂いが
潮の香りと交じり合って


鼻の奥にすみつく。




・・・・・こんなにドキドキしてる・・・・


心臓の鼓動を鎮めようとして

真っ青な空に向かって


深呼吸した。


< 16 / 201 >

この作品をシェア

pagetop