あの頃、テレフォンボックスで
中村さんのことばの
一つ一つが
私には痛い。


そして大切な人と
一緒にいられる中村さんに
少し嫉妬してる。



「そうだ・・・・
ねえ、佐山さん、
前に好きな人がいるって言ってたわよね?

未来ちゃん、何か知ってるのかしら?


ゆうべ
なんだかそんなことを言ってたわ。」


「ど、どんな風に?」


「あんまり言いたくないけど、
お父さんもお母さんも嘘つき、
・・・・・大・・・・嫌い。

って。」



「ほかには?」


「詳しくはなにも言ってないから
わからないけど・・・・・

佐山さん・・・その人と・・・
なにか、ないわよね?」


私は軽く頭を振った。


「ないわよ、なんにも。
あるわけないのよ。

私には・・・そんなこと・・・・」



私は、
人を好きになることもできない。
大切な人を大切だと言える勇気もない。

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