あの頃、テレフォンボックスで
「うちの亜紀にしろ、未来ちゃんにしろ
難しい年頃だし、なにかと敏感なのよね。
佐山さん、私たち・・・・
今はやっぱり子どものために
生きなきゃいけないのよね、結局・・・」


中村さんのいうことはもっともだ。


だけど、
彼女は大切な人と子どもたちと・・・
両方を手にもっている。



私には何もない。



中村さんと別れてからも
ずっとそんな想いにとらわれていた。



この年まで生きてきて、
私には何もないなんて。




帰り道、
駅前のコーヒーショップに
一人で入る。


「いらっしゃいませ~。」


アルバイトの子たちが
一斉に声をあげる。

レジを済ませ、
カフェラテができるのを
カウンターで待っていた。


「カフェラテお待ちのお客さま・・・」



飲み物を持って振り返ったのは
ケイタだった。
< 171 / 201 >

この作品をシェア

pagetop