あの頃、テレフォンボックスで
『トーコさん、
明日5時に‘銀の鈴’に来れる?』


ケイタから久しぶりにメールがきた。


少し迷って・・・・
返信した。


『5時に行きます。』



朝から何も手につかず、
そわそわしながら夕方まで
無為に時間を過ごしていた。


久しぶりといっても・・・
10日ほど会っていないだけ。

それなのにケイタに会うのが
恥ずかしい。

だけど、嬉しい。


・・・何を着ていこうかしら?



約束の時間はせまっているのに、
着ていくものすら決められない。


今さら・・・・
何を着ていても、

同じよ。



私は佐山瞳子。
ケイタの後輩の母親。


彼とは不思議と波長があったけれど、
それは単なる偶然であって、
それ以上のものではない。



何度もそう反芻する。



たとえ、彼のおかげで
私の人生に一瞬のきらめきが見えたとしても

それは・・・
私だけの胸に・・・・










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