あの頃、テレフォンボックスで
ケイタは15分遅れて‘銀の鈴’にやってきた。


めずらしく制服のままで。
少し伸びた髪を
無造作にかき上げながら。



「ごめん、遅れて。
ちょっとバイト先に用事があって・・・

このあとは塾だから、
あんまり時間ないんだけど。」




「ハードねぇ・・・
どうしてアルバイトなんか?

いつからあのお店にいるの?」


オーダーしたコーラを飲み干すケイタ。


「すいません、
コーラもう1杯と
ミックスサンドお願いします。」



制服のケイタを見るのは
文化祭のとき以来だ。
普段の服装よりも・・・
きりっとしていて大人びて見える。


普段着の方が子どもっぽく見えるなんて・・・


未来たち女の子は
私服の方が
断然大人っぽいのに。



それにしても、
ケイタを目の前にすると、
せっかくの決心が揺らいでしまう。


ケイタに触れたい。



・・・もうこれきりよ。

そのひとことが、言えなくなる。




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