あの頃、テレフォンボックスで
家に帰ってから、
夫に電話をかけた。


今は話したくない。

けれども、保険のことや
事故後の処理など、
どうしたらいいのか何もわからない。


何度も何度もかけ直して、

やっと夫につながった。


「もしもし・・・・?

瞳子?


・・・・・・どうした?」



「あ・・・事故をおこしちゃって・・

塀にぶつけたんだけど・・・

ええ、私は大丈夫・・・・・」


話しているうちに、
胸の中に詰まっていたものが
全て溢れ出してきた。


そして
私は、大きな声をあげて
泣いていた。



低く、
地の底から湧きあがってくるような
大きな声で。


激しい慟哭。



あとからあとから
溢れてきて、


涙を、

自分を、


止められない。

< 187 / 201 >

この作品をシェア

pagetop