あの頃、テレフォンボックスで
ずっと考えていた。
誰かを愛する、ということについて。


今まで、
愛されたいと願っていても
愛してる、と
強く思ったことは
なかったのかもしれない。


こんなに愛しているのに、
私たちは
結ばれない。


馬鹿ね・・・・


私はやはり
私でしかいられない。



そのとき、
インターホンが鳴った。



・・・こんな時間に、誰かしら?


時計の針は11時をまわっている。
夜になって
雨はすっかり止んだようだ。


インターホンを覗くと
そこに
ケイタの姿が映っていた。



「・・・・はい、
ちょっと待って。」



驚いて
玄関まで駆けていく。


さっきケイタと別れてから
動転してしまって、
連絡することすら
忘れていた。


ドアを開けると
彼は自転車にまたがったまま
片足で立っていた。



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