あの頃、テレフォンボックスで
次の日、
夫は帰ってきた。

私が起こした事故の処理をしに。


あちこちに
ひと通り連絡を済ませて、
二人して相手のお宅に
謝罪のために
でかけたあと、

家に帰ってきて夫は
 
「本当はもう少し予定が立ってから
話そうと思ったんだけど・・・・」


と切り出した。


今の仕事を辞めようと思っていること。
知人の紹介で
大阪にある小さな会社に
転職しようとしていること。


家を手放して、
小さな中古のマンションでも買って
一からやりなおすつもりでいること。



「瞳子が・・・

あんなに取り乱して
泣くようすを
初めてみて驚いた。


以前から
このままじゃいけない、
と思っていた。


泣き叫ぶトーコを

電話口でしか
受け止めてやれない、

今の生活は
間違っているんじゃないか、と・・・・」

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