あの頃、テレフォンボックスで
秋のはじめに
ケイタが
『どっか、行きたくね?』

とメールしてきた。

ちょうど観たい映画があったので
そのことを伝えた。



電車で15分くらい行った街の
小劇場で短いフランス映画を観た。



フランス南部の田舎町で
カフェにたわむれる
老齢の男たち。


毎日同じ時間にやってきて
同じコーヒーを飲み
シガレットをくわえて
ぼんやりしている。

たまに気がむくと
近くにいる男に
話しかける。


自分の人生について。

今はもうなくなってしまった
故郷について。

むかし抱いていた夢。



亡くなった妻のこと。


それぞれが
気の向くままに
思い出しながら・・・・




過去と向き合うことだけが
自分を支えている

そんな男たち。


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