あの頃、テレフォンボックスで
「こんな年になってねぇ・・・・」

「え?何?」



「だから、どっちかっていうと
もう50才に近いじゃない、私?

四捨五入すれば、そっちに入るし。



こんな年になって、
再婚するなんてこと

考えてもみなかったわよ。」



「再婚するの?
だから、亜紀ちゃんが
家出してきたってわけね。」



「そうなの。
でも、もう何年も前から
ママの大切な人って言って紹介してたし、
勇斗も亜紀もなついてたのよ。
北中さんっていうんだけど。
で、そろそろ一緒になろうか
って話になったのよね。」


「勇斗くんはなんて?」


「いいんじゃね?だって。
もう、親のことなんてどうでもいいのよ
あの子は。


大学生なんだもん、
自分のことで精一杯って感じよ。
せめて名前だけでも、
勇斗は中村のままがいいんじゃないかって
思ったんだけど、めんどくさいから
みんな一緒に北中でいいんじゃないの?
だって。


でも、亜紀は絶対イヤだって。

ママ一人が
北中になればいいっていうのよ。

あの子こそ結婚すれば
苗字なんて変わるんだから、
なんでもいいと思うのにね。


いつまでも前の夫の姓を名乗ってた
私が間違ってたのかな。

離婚したときは
勇斗が中学1年で、
やっぱり姓がかわることを
絶対イヤだって拒否したのよ。



うまくいかないもんだわ。」
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