あの頃、テレフォンボックスで
「そう考えると、
苗字なんて無意味なもんよね。
ただの記号でしかないわ。」


「へぇ~~、佐山さんも
言うようになったわね。」


「そう?」


うふふ、と笑って、
運ばれてきた前菜を食べた。



・・・愛されてるという実感がない、
そんな生活なら、いらない・・・・・




中村さんは、そう言ってた。


北中さんというその人は
ちゃんと
「愛」をくれる人なのね。



仕事があって、子どもがいれば
それでもう十分。


そう言ってたけれど、
結局は
女は男なしでは生きられない。



男だって、そうだ。



誰かに愛されなくては、


そして、


誰かを愛していなければ。



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