あの頃、テレフォンボックスで
「なんか感じ変わったなぁ、
佐山さん。


好きな人でもいるの?」


「え?なんで?」


「私、今、幸せだから。
人の幸せも匂ってきちゃう。」


「そう・・・
中村さん、鋭くて
ときどきイヤなのよね。


いるわよ。


でも、好きだなぁ・・・
って思ってるだけ。
どうこうしようってわけじゃないの。」


「堂々と言えるところが、
年取ってあつかましくなった証拠よ。

なんだか安心した。

佐山さんって・・・
割りと感情出さない人だから
わかりにくいなってとこあったのよね。」


「そう?」

「そう。孤高の人。
若いクセにイヤな感じだったわよ。」


私たちは顔を見合わせて
笑った。



だから、私には友達と呼べる人が
いなかったのかもしれない。



ただ通り過ぎてゆく、
知り合いばっかり。


「ね、どんな人なの?
その片想いの彼は。」


「まっすぐな人。
それ以上は聞かないで。」


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