あの頃、テレフォンボックスで
「それはそうと・・・・
ママ、ケイタさんに会ってる?」



思わずドキっとして
動きが止まる。


「どうして?」

「貝塚さんが、駅で車から降りる
ケイタさんを見かけたんだって。
通り過ぎる車を見たら
運転してたのがママだったって。」


「そうなの。
雨が降ってた日かしら?
たまたま見かけて、駅まで乗せてあげたことはあるわ。」


「ふ~ん、
それから長井くんが本屋で一緒にいるのを
見たって言ってた。」


・・・・・・・どこの本屋で?


「そう。
よく会うのよね、なぜだか。
あの子・・・ケイタさんってちゃんと
授業に出てるのかしら?

街中をよく一人でフラフラしてる。
絵や映画に興味があるみたいで。
ママもそういうの、好きじゃない?

そしたら、行くさきざきで出会うのよ。
会うといろいろ聞いてくるから・・・

長井くんも声をかけてくれれば
よかったのにね。」


・・・・・未来は返事をしない。


説明しすぎたかしら?
かえって・・・・不自然だった?



「未来は、長井くんとはどうなってるの?
あれから連れてこないけど。」

「家に連れてきてどうするのよ。

ケイタさんのこと、今度ママから
貝塚さんに説明してよねっ。」



言いたいことだけ言って
ジュースを持って
未来は部屋に戻っていった。




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