あの頃、テレフォンボックスで
それにしても、
誰も私とケイタのことを疑わない。

当り前か・・・・・
そう思ってみるけど、それはそれで
少し悲しい。


そんなことで
がっかりしても仕方ない。

壁にかかった絵を見つめる。

私もケイタも
この地球上では
取るに足りない、ちっぽけな存在。


こうして出会えたことが
奇跡。


この年になって、「奇跡」なんていう私を
人は笑うだろうか。



もうすぐ10時。
夫が帰ってきたら、「こんな時間まで」、と
文句を言うに違いない。
少し遅くなる、とは言ってたけれど・・・

いつもはいない人が
いるとなると
なんだかんだと不便だわ。



「ママ、みんな帰るって。」

「あら、そうなの?もう遅いしね。」

「ケイタさんから電話があったみたい。」

「え?」

「あ~、俺の携帯にケイタから電話があって
今からケイタの家に行きます。
女子は・・・途中まで送って行きますんで・・・
えっと、ありがとうございました。」

林くんに、ケイタから電話が・・・。


「あら、そうなの。
遅いから気をつけてね。
女の子たち、ちゃんと送ってあげてね。
また、いらっしゃい。」



よかった、夫が帰ってくる前で。

玄関でみんなを見送ったら未来は
お風呂に入ると言った。


後片付けをして、ソファに座る。


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