あの頃、テレフォンボックスで
「ちゎーっす。」

「お、タケ、女連れ?」

「彼女っす。」


・・・・え?私、彼女なの?

森川くんは、振り返って私の方を見て
片目をつぶる。
手はつないだまま。

自分の顔がだんだん赤くなるのがわかる。

店は6時をすぎたのでライトをおとして
暗い水の底みたい。


「あっち行こ。」

と、森川くんはカウンターの一番奥の席まで
私を連れていく。


店にはマスターと
マスターを慕う学生らしき男性が二人。


「これから、どんどん来るよ。
マスターの連ればっかりね。


俺はいつもはあっちの端に座ってて
混んでくると、見るに見かねて
マスターを手伝ってるんだ。」


お水を持ってきてマスターが言う。

「金がないから、適当に手出して
ただで飲んで帰ってるんだろ。」


みんなが笑う。


ここは・・・・なんだかあったかい。


「瞳子ちゃん、何のむ?
えっと・・・ジンジャエールとかでいい?」

「うん」

「じゃ、マスター瞳子ちゃんはそれで。」

「それって何だよ、エラそうだなぁ。」










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