雪が降る町~追憶のletter~


「晶ー今日は···」
「都築さん、ごめんね。今日はオレが先約~」


いつものように晶のデスクに迎えに来たありさを、晶の後ろから現れた真田がさらりとそう言うとずるずると晶を引きずるように外へ出た。

ありさはぽかんとしていたが、元々真田の晶に対する態度も気になっていたから特に驚くこともなく、ただ、あとで晶を問い詰めようとうきうき終業時間を待とうとニヤけながら一人後から外に出た。


「都築さんにばっかりいつも取られちゃうからたまにはね」
「え?え?」
「結城さん何か食べたいものある?」
「いえ··何でも···」


完全に真田のペースで事が進んでいる。
でも警戒心があまり働かないのは、やはり真田の特有の雰囲気だろう。

なんだか裏がないというか、下心を感じられないというか···

例えるなら、昨日会った大地のもうちょっとフェミニストな感じとでも言おうか。


「じゃあすぐそこに安くてウマイとこあるからいく?」
「はい、そこで」
「ワンコインでそこそこ量もあってね!ああ、でも結城さんは量は普通でいいのか」
「いえ、食べます」


晶の返事を可笑しそうに笑いながら真田は晶を一軒のお店へ案内した。

< 117 / 218 >

この作品をシェア

pagetop